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セイドレイ【完結】
第51章 顔
翌朝、楓は電車に揺られていた。
都心の通勤ラッシュとは無縁の、各駅停車のローカル線だ。

窓から覗く景色が、都会のビル群からのどかな田園風景へと移り変わって行く。

結局、昨夜は一睡もできなかった。
寝不足で浮腫み、涙で腫れた瞼が窓に写る。

「...ひどい顔ね」

楓が向かっている場所。
それは、あの手紙に書かれていた場所だった。

これから亜美の本当の父親に会いに行く。
しかし頭の中は全くのノープランだ。

手紙に書かれていた住所には、『一之瀬工務店』とも書かれていた。
恐らく自営業で、自宅兼会社なのだろう。
ネットで調べたところ、その工務店は今も営業している。


電車に揺られること、約40分弱。
市街地から少し離れた小さな駅に楓は下車した。

「...たまにはこういうところも良いものね」

稲刈りの済んだ田んぼを横目に、楓はスマホのマップを片手に目的地へ歩み出す。

都会の喧騒から離れ、秋風が荒ぶその町には住民達の生活の音が息づいていた。
都心から少し電車を乗り継げば、こんなのどかな風景が広がっているのだ。

「...私もたまには、実家に顔を出さないと」

レイプ被害者でありながら、それを公表して活動する楓のことを、両親はいつも心配していた。
『そろそろ孫の顔が...』と思っているには違いないだろうが、楓の過去を思えば口が裂けても言えないのだろう。

「(親不孝よね....ほら、こんな風にレイプ被害者は事あるごとに自分を責めるのよ。犯人が捕まろうが刑が確定しようが、この傷は一生付き纏うの...)」

だからこそ、ああして出来た子供を産もうとする亜美の気持ちが、楓には尊いことのようにも思えるし、死ぬほど愚かなことのようにも思える。

レイプ被害者として、紙とペンを武器に闘って来たが、そんな楓に寄せられる批判は実に様々だった。

『所詮傷モノの女』
『被害者を利用して金儲けか』
『こいつ本当はレイプなんてされて無いだろう』
『本当に辛かったら公表なんてしない』

覚悟していたとはいえ、そんな批判が男だけでなく、同性である女から聞こえてくる時もあった。

では世の中は、あの高崎亜美という少女の心の声に触れた時、果たして何を思うのだろうか。

その代弁者として楓は筆を取ろうとしているのだ。

そんなことを思いながら歩いていると、前方に『一之瀬工務店』の看板が見えた。
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