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セイドレイ【完結】
第51章 顔

「ここだわ...何も考えずに来ちゃったけど、どうしよう...」
楓は一之瀬工務店の前で立ち尽くす。
辺りに時間を潰せるような場所と言えば、ここへの道中に一軒だけあった寂れた喫茶店だけだ。
「...あれあれ?こんな美人のお姉さんが、ウチみたいなオンボロ工務店に何か用かい?」
背後から男に声を掛けられた楓は、振り返る。
「...あっ.......」
その男の顔を見て、楓は瞬時に悟った。
作業服に身を包み、無精髭を生やしてはいるものの、一目見た瞬間に吸い込まれそうになる、強くもありながらどこか儚げな瞳。
細く筋の通った形の良い鼻。
やや物欲しそうにも見える愛嬌のある唇。
若見えするわけでも、老けて見えるわけでもない。
重ねた年齢が着実に魅力となって、この男の顔に宿っている。
一言で言えば、かなりの色男だ。
「ん...?僕の顔、何か変ですか...?」
男はそう言って、楓の顔を覗き込む。
思わず、昨日病室で見た亜美の顔が、その男の顔に重なる。
「(血は汚いものだと言うけれど...反応まで同じだなんて。性別は違ってもこれじゃ生き写しじゃないの...!)」
一之瀬啓太郎。
楓は、その男が亜美の血縁上の父親であることが、確かめるまでもなく分かってしまった。
「...す、すいませんっ...ちょっと道に迷ってしまって」
楓は咄嗟に嘘をつく。
「...本当かなぁ~?そんなこと言って、本当は保険のセールスのお姉さんとかでしょ?いつも飴とか置いてってくれる。...ていうか、あれ?僕お姉さんの顔、どっかで見たことある気がするんだけど...気のせいかな?」
「え、えぇ...多分人違いかと...」
楓は自分がメディアに出て顔の知れた存在であることをすっかり忘れていた。
「そっか...なら良かった!それもそうだよね。お姉さんくらい美人なら、どっかで会ってても忘れるわけないか...はははっ」
そう言って男は、白い歯を零して笑顔を見せる。
「(何なのこの男の...一瞬にして人を惹き付ける魅力...まるで2日続けて同じ人に会ってるみたい...)」
「...で、道に迷ってるって言ってたけど...こんな田舎町のどこに用があるの?何なら案内するけど...」
「あ...えーっと...その.....」
楓は一之瀬工務店の前で立ち尽くす。
辺りに時間を潰せるような場所と言えば、ここへの道中に一軒だけあった寂れた喫茶店だけだ。
「...あれあれ?こんな美人のお姉さんが、ウチみたいなオンボロ工務店に何か用かい?」
背後から男に声を掛けられた楓は、振り返る。
「...あっ.......」
その男の顔を見て、楓は瞬時に悟った。
作業服に身を包み、無精髭を生やしてはいるものの、一目見た瞬間に吸い込まれそうになる、強くもありながらどこか儚げな瞳。
細く筋の通った形の良い鼻。
やや物欲しそうにも見える愛嬌のある唇。
若見えするわけでも、老けて見えるわけでもない。
重ねた年齢が着実に魅力となって、この男の顔に宿っている。
一言で言えば、かなりの色男だ。
「ん...?僕の顔、何か変ですか...?」
男はそう言って、楓の顔を覗き込む。
思わず、昨日病室で見た亜美の顔が、その男の顔に重なる。
「(血は汚いものだと言うけれど...反応まで同じだなんて。性別は違ってもこれじゃ生き写しじゃないの...!)」
一之瀬啓太郎。
楓は、その男が亜美の血縁上の父親であることが、確かめるまでもなく分かってしまった。
「...す、すいませんっ...ちょっと道に迷ってしまって」
楓は咄嗟に嘘をつく。
「...本当かなぁ~?そんなこと言って、本当は保険のセールスのお姉さんとかでしょ?いつも飴とか置いてってくれる。...ていうか、あれ?僕お姉さんの顔、どっかで見たことある気がするんだけど...気のせいかな?」
「え、えぇ...多分人違いかと...」
楓は自分がメディアに出て顔の知れた存在であることをすっかり忘れていた。
「そっか...なら良かった!それもそうだよね。お姉さんくらい美人なら、どっかで会ってても忘れるわけないか...はははっ」
そう言って男は、白い歯を零して笑顔を見せる。
「(何なのこの男の...一瞬にして人を惹き付ける魅力...まるで2日続けて同じ人に会ってるみたい...)」
「...で、道に迷ってるって言ってたけど...こんな田舎町のどこに用があるの?何なら案内するけど...」
「あ...えーっと...その.....」

