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セイドレイ【完結】
第52章 親展
明くる日、2人は朝早くにラブホテルのチェックアウトを済ませた。

『また...会える時はいつでも連絡して。絶対予定空けるから。それから困ったことがあったら何でも言ってね。僕にできることなんか無いかもしれないけど...』

男はそう言って、昨日と同じワイシャツに身を包み、ビル街へ消えて行った。

(はぁ...カラダが...重い...)

4年前までは、これが毎日のことだった。
いや、この程度で済めばむしろその日は楽だとさえ思っていた。
それが、『高崎亜美』にとっての『普通』だったのだ。

昨夜はあれから夜中まで何度もセックスをした後、一緒に風呂に入り、カラダを洗い合った。

男はどうやら、亜美がピルを服用していると思っているらしい。
都合のいい思い込みではあるが、膣内への射精を易々と了承したことでそう解釈したのだろう。
事実は異なることを告げると都合が悪そうなので、亜美は適当に頷いて誤魔化した。

やはり、自分は普通ではないのだろうと亜美は思う。

久々に男に触れられたことで、あのどうしようも無い『疼き』と『渇き』は、一旦どこかへ去ってくれたように感じるのだがーー。

(でも...アレはまたやって来る...必ずまた...)

すると、スマホのバイブが鳴る。
メッセージだった。

「お父...さん?」

啓太郎から届いたメッセージは、数十枚の画像だった。
恐らく、昨日動物園に行った時に撮影したものだろう。

朝日と陽気が様々な動物に指を差し、驚いたり、笑ったり、泣いたりしている写真。
口の周りに米粒をたくさん付けて、おにぎりを食べている写真。
帰りの車の中で、2人同じ顔をしてスヤスヤと眠っている写真ーー。

そして最後に、動画が届いた。
亜美はそれを再生する。

『マーマ!おべんきょ、がんばってね!』

2人が声を揃えてそう言ったかと思うと、

『...じゃない!がんばるじゃなーいっ!』

「はは...んもぅ...朝日は本当に...」

『マッマ!がんばりましゅ!』

「あはは...陽気が頑張ってくれるの...?」

そんなビデオメッセージよって、亜美は『女』の顔から『母』の顔へすっかり戻っていた。

(ママ...頑張るね。あなた達が居てくれて、本当に良かった...)

亜美はそんなことを思いながら、研究会の会場へと足を運んで行った。
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