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セイドレイ【完結】
第52章 親展
「.....という訳で、対人コミュニケーションというのは、赤ちゃんが生まれた直後、お母さんの腕に抱かれた瞬間からスタートしているのです」

研究員がプロジェクターの前で、母子の愛着形成について論じている。
亜美はそれを真剣に聴きながら、広げたテキストに何かを書き込んでいるようだった。

(母と子って...やっぱり奥が深い...)

普通に生活していたら知ることのない知識。
やはり、学びは尊いものだと亜美は実感していた。

亜美がこの道を志したきっかけは、子育てをしていく中で抱いた漠然とした不安からだった。

父親が誰なのか分からない子供を産み、育てるということ。
しかも、あんな異常な環境下で胎児を宿していたということ。
母体である亜美が感じていたストレスは相当なものだ。

もし我が子に何か遺伝的な疾患や発達の遅れが見られた時の為に、知識を持っておきたかったのだ。
決して、そのことを恐れていた訳では無い。
もしそうだった時に、親としての責任を果たすにはどうすればいいかを考えてのことだった。

生まれて来た我が子に、全く罪は無いのだ。

戸籍上の父親であった信哉が遺してくれた、血縁上の父親である啓太郎の存在。
それは、血の繋がらない信哉が亜美へと注いだ愛の証だ。

そんな亡き父の意志を受け継ぐ意味もあったのかもしれない。

幸いなことに、朝日と陽気は今のところ問題なく育っている。
しかし人は一度この世に誕生してしまえば、生涯をかけて自身と対峙して行かなければならない。

通常、親は子よりも先に死ぬ。
自身のエゴで生んだにも関わらず、愛する我が子の、その一生を見届けることができないのだ。

出生に秘密を抱えた朝日と陽気が、そのせいで将来壁にぶち当たるかもしれない。
『どうして生んだんだ』と亜美を責めたり、最悪の場合、自分自身の存在を責めてしまう時が来るかもしれない。

だから、何か遺さなければいけないと、亜美は思っていた。
今は伝わらなくとも、いずれ自分がこの世を去った後に、息子達に残せるものをーー。

同じ顔、同じ形をしていても、それぞれに個性を持った双子の我が子。

亜美はそんな朝日と陽気が、愛おしくてたまらなかった。


「...では、以上となります。ご清聴、ありがとうございました」
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