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セイドレイ【完結】
第53章 落日
「むふぅ...んぁっ.....マッマ...マッマぁ.....おっぱぃ...俺のおっぱぃ...ハァ...ハァ...」

入学式の夜。
夫婦の寝室で、亜美の乳房に顔を埋める健一。

以前より、健一はセックス時にこのような幼児退行を思わせる行動があったのだが、再会し夫婦となってからはその傾向がより強まっていた。

理由は恐らく、母親として朝日と陽気に接する亜美を見てしまったからであろう。
健一が知る当時15歳の亜美は、既に母性の片鱗を見せていた。
しかし、今の亜美から溢れ出る母性は、あの頃でさえ十分過ぎる程だったのに、更に輪をかけて健一を焚き付けた。

やんちゃな男児2人を相手に向けられる亜美の眼差しは、まさに健一がずっと求めていた究極の理想系そのもの。

朝日と陽気が羨ましくて仕方が無かった。
この乳房から母乳を育まれ、それを血として骨としてきたのだ。
亜美からそんな無償の愛を注がれているその2人の父親にまさか自分がなろうとは、健一は夢にも思っていなかっただろう。

子供達は、初対面こそ健一を警戒していたが、じきに懐いた。
後から聞いた話だが、亜美が健一との結婚を決意したのは、それが理由らしい。
子供が『NO』と言えば、そのつもりは無かったそうだ。

そんなところも含めて、健一は亜美のことが狂おしい程に愛しかった。

健一は今、自宅近くの工場で働いている。
実刑判決を受けたことにより、10年間の医師免許停止処分になったからだ。
稼ぎは当然減ったが、元犯罪者として考えれば十分過ぎる待遇。
仕事はほぼ毎日定時で終わり、土日休みや大型連休もある。

毎日、愛する妻の手料理を食べ、週末は2人の子を連れて遊びに出かける。

そして、夜はこんな風に甘えるのだ。

幸せ過ぎて罰が当たりそうだと、健一は思っていた。

健一は、ついに夢が叶ったのだ。

そうなれば当然、セックスに対する感覚も変化する。

亜美を肉便器として扱っていたあの頃。
その中でも健一は、途中からそのことをやや躊躇していた中の筆頭ではあるが、あれはあれで圧倒的な背徳による快感があったのは事実だ。

しかし今は、そんな肉欲に溺れた日々の記憶が霞んでしまう程に、夫婦の営みとして行うセックスの多幸感に包まれている。
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