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セイドレイ【完結】
第53章 落日
その言葉は、6年の歳月を経て、亜美をようやく『あの夜』へ連れ還ったのだった。

武田家の屋敷が業火に包まれる直前。
むせかえる男達の臭気が立ち込める地下室。
そこにたった独り、女として存在していたあの夜。
いや、もはや性別など無かった。
ヒトとしての尊厳を捨て去り、ただの肉塊となり嬲られるだけのそんな夜の記憶が、今鮮明に甦るーー。


『じゃあ赤ん坊はいらねぇんだな?売っちまおうが堕ろそうが関係ねぇよな??お前はチンポさえありゃそれでいいんだよなぁ!??なぁ!!???』

『あ゛っ...ハイ.....いらなぃ.....いらなぃぃぃ...!赤ちゃんいらないっ!!おちんぽっ...おちんぽがいいのぉぉぉ...あ゛あ゛っ!!!』


何をどう言い訳しようとも、これはあの夜に亜美が自ら発した言葉だった。
男達に言わされたのでは無く、自身の底から湧き出た内なる叫び。
何度も何度もそう叫びながら、とめどなく寄せては返す快楽の波に溺れ、夢中で腰を振り続けた。

もしあの時、菅原が放火をしなかったらーー。
たとえ一瞬でも、亜美はそう考えてしまう自分が怖かった。
だから亜美は、雅彦の帰りを待つことだけを心の支えとした。
自分をこんな風にしてしまった諸悪の根源であるその男に、『愛』という形を以て責任を取らせたかったのかもしれない。

(でもこれで…やっと還れる。あの日に、あの場所にーー)



「……私が本当に欲しいものはっ…」

亜美はそう言いながら、シートの背にもたれ掛かり座面に浅く座ると、下半身を強調するようにして股を開いた。
そして身に纏う薄手のニットワンピースをたくし上げ、自らゆっくりとショーツを脱いで行く。

亜美の真っ白な両太ももをショーツのゴムが下降するその様子に、男達の視線は釘付けとなり、ゴクリと生唾を飲んでいた。

「あんっ……」

媚態が入り混じる、短い喘ぎ。
ショーツのクロッチ部は既に愛液で滲み、ワレメからとろんとした粘液が糸を引く。
こんな状況にありながら、亜美の女陰はジットリと濡れそぼっていた。

もはや弁解の余地は無かった。
宿した命を堕胎すると誓ったそばから、膣を湿らせる女。
人の愛に触れても尚、破滅への衝動を止めることが出来ない、そんな憐れな女ーー。


(それが…私の還る場所ーー)
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