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セイドレイ【完結】
第11章 部外者

茹だるような暑さが続く8月上旬。
亜美はその日、登校日のため学校へ来ていた。

しばらく地下室に幽閉されていた亜美にとって久々となる外の世界。

ホームルームが始まり、夏休み前半の課題を提出するとともに、後半の課題を受け取る。
亜美は課題の量を確認し、大体どのくらいで終えることができるか予想をした。
残りの夏休みがどんな日々になるのか、亜美には見当もつかなかったからである。

あの後、雅彦の判断で地下室から解放された亜美は、相変わらず3人からの陵辱を受け入れる日々。
特に慎二は、前回の一件があってから明らかに調子に乗っているようだった。

しかし、今は耐えなければ──。

今の亜美を支えていたのは、いつか全てから解放される日を想像すること。
これから起こりうること以上に、それらをどう対処していくかという方向へなるべく意識を集中させようとしていた。

一方で、そんなことを考えてもまったく無意味なのでは──という不安が襲ってくるときもあった。

相反するふたつの感情が、一日のうちに何度も亜美の中で交錯する。
高校生にとって楽しいはずの夏休みも、亜美にはどこか遠い国の出来事のようだった。




「高崎、ちょっといいか?」

午前中で授業を終え、昇降口で靴に履き替えようとする亜美に、1人の男性教師が声をかける。

「あ、はい…何でしょうか?」

「悪いが、ついてきてくれ」

彼の名は、本山宏志(もとやま ひろし)。45歳。
光明学園の生活指導を務める体育教師だ。
柔道部の顧問でもあり、その風貌は身長180センチはあろうかという大柄で、筋肉の上にたっぷりと脂肪が乗った巨漢である。

その見た目と生徒指導という役割から、特に女子生徒からの評判はすこぶる悪い。

また亜美にとって本山のその風貌は、嫌でも武田家の男どもを連想させるため、あまり近寄りたくない教師の1人だった。


(私なんかしたかな…本山先生…ちょっと苦手…──)


これまで教師から呼び出しを食らったことなど、一度たりともない亜美。
当然、心当たりなどない。

亜美は不審に思いながらも、本山の大きな背中に続いていく。


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