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セイドレイ【完結】
第54章 最終章:夢のあと
本山の肉棒はもうひとつの心臓かのように、ドクドクと大きな脈動を刻み続け、脳天を直撃する強烈な射精の快感が全身を駆け巡る。
しかし、それはかつての物言わぬ玩具から一方的に得られていた快楽とは全く異なるものだった。
男が女に還る瞬間。
ケダモノとしてではなく、ヒトとしての営みがそこに生まれる。
そして亜美は、次の男の名を呼ぶ。
愛を知らないその男に、救いの手を差し伸べるために。
そして、たった一人愛した男を、永遠に愛し続けるためにー。
「…田中さんも、"おかえりなさい"ーー」
和室に置かれた雅彦の遺影は、己が愛した女が月明かりの影に揺れているのを、その黒い縁取りの中から眺めていた。
透き通るような肌は、あの日のまま。
曲線のみで構成された、しなやかな肢体。
その中腹で、今宵の月のようにまんまると浮かぶのは、己が生きた証として托卵させた新しい生命のゆりかごだ。
初めてその女を見た時、まだ穢れを知らない少女だった。
やがて少女は不幸を知って、女になった。
そんな女を愛した。
愛してしまった。
壊したい程に強く、愛してしまった。
壊れれば壊れるほどより強く、愛してしまった。
そして気がつけば、己が壊れてしまっていた。
ここからでは、もうその柔肌に触れることさえできない。
その小さな口からこぼれる哭き声を聴くことすらできない。
今も昔も。
そして永遠に。
己の目の前でその女が壊れていく様を、ただ見ていることしかできない。
それでも。
己の一生をかけて、その女を愛してしまうだろうーー。
『男は最初の男になりたがり、女は最後の女になりたがる』
ーオスカー・ワイルドの言葉だ。
男は女の未来を奪い、そして女は男の永遠になった。
それは、こんな月明かりの綺麗な夜だったーー。
(お父様…見てる?)
(私が誰かに愛されるのを)
(そして…誰かを愛するのを)
(もう…二度と目を逸らさないで)
(私を…独りにしないで)
(これからもずっと)
(私だけを見ていて)
(永遠に……)
しかし、それはかつての物言わぬ玩具から一方的に得られていた快楽とは全く異なるものだった。
男が女に還る瞬間。
ケダモノとしてではなく、ヒトとしての営みがそこに生まれる。
そして亜美は、次の男の名を呼ぶ。
愛を知らないその男に、救いの手を差し伸べるために。
そして、たった一人愛した男を、永遠に愛し続けるためにー。
「…田中さんも、"おかえりなさい"ーー」
和室に置かれた雅彦の遺影は、己が愛した女が月明かりの影に揺れているのを、その黒い縁取りの中から眺めていた。
透き通るような肌は、あの日のまま。
曲線のみで構成された、しなやかな肢体。
その中腹で、今宵の月のようにまんまると浮かぶのは、己が生きた証として托卵させた新しい生命のゆりかごだ。
初めてその女を見た時、まだ穢れを知らない少女だった。
やがて少女は不幸を知って、女になった。
そんな女を愛した。
愛してしまった。
壊したい程に強く、愛してしまった。
壊れれば壊れるほどより強く、愛してしまった。
そして気がつけば、己が壊れてしまっていた。
ここからでは、もうその柔肌に触れることさえできない。
その小さな口からこぼれる哭き声を聴くことすらできない。
今も昔も。
そして永遠に。
己の目の前でその女が壊れていく様を、ただ見ていることしかできない。
それでも。
己の一生をかけて、その女を愛してしまうだろうーー。
『男は最初の男になりたがり、女は最後の女になりたがる』
ーオスカー・ワイルドの言葉だ。
男は女の未来を奪い、そして女は男の永遠になった。
それは、こんな月明かりの綺麗な夜だったーー。
(お父様…見てる?)
(私が誰かに愛されるのを)
(そして…誰かを愛するのを)
(もう…二度と目を逸らさないで)
(私を…独りにしないで)
(これからもずっと)
(私だけを見ていて)
(永遠に……)