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黒い雨
第8章 下宿魔
かつのりの家は、ふたりの息子が亡くなったので残っている子供はみわことみさこだけになってしまいました。

かつのりとかすみ夫婦は、ふたりの娘だけでも守って行こうと訣意(けつい)しましたが、どのようにしてふたりの娘を守って行けばいいのか分からなくなっていましたので、大パニックにおちいってしまいました。

時は、8月7日の昼過ぎのことでありました。

困り果ててしまったかつのりは、妹のすずね(51歳・無職)を家に呼び出しまして、市役所に勤務しているオイゴのけんいちろう(31歳)が20年先の人生設計はどうなっているのか知りたいので家に来いと怒った口調で電話をしまして呼び出しました。

かつのりの家のおカネを使って公立高校から松山大学ヘ行って、華のキャンパスライフを過ごして、シューカツをしなかった…

卒業後はかつのりのコネで市役所に就職をしたので、かつのりはすずねに『いつになればお礼のあいさつに来るのだ!!』と繰り返してサイソクしていたのに、けんいちろうは1度もお礼を言いに来なかった…

かつのりは大声ですずねを怒鳴りつけていたので、すずねは『アタシしんどいのにぃ…』と言う表情をしていました。

かつのりは、すずねのけだるい態度に腹を立てていたのでますます怒り狂っていました。

家の居間には、かつのりとかすみとすずねの3人がいまして、話し合いをしていましたが、穏やかに話し合いができる状態ではありませんでした。
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