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第33章 くたびれた男…。

その男は
帰り道………

つい今の今
ほんの少しの言葉のやりとりをした
その女性に心惹かれた…

『どこの家の奥さんなのかな？　あの場所にゴミを捨てるんだから意外とご近所さんじゃないのか？』
その男はつい来た道を
振り返った…


まだ向こうにこちらに背を向けて
あの女性が歩いていた。

ドキドキ…ドックンドックン！
せめて家の場所だけでも知りたい！
もう一度会うことはできないのだろうか？


そのくたびれた男は
一瞬
若い頃のナンパに明け暮れた日々を思い出した

ﾊｱﾊｱ………ﾊｱﾊｱﾊｧﾊｧﾊｧﾊｧ………！！

男はその女性に
気づかれないように
最新の注意を払い
尾行をはじめた。

その女性が道の角を曲がった…
男は少し小走りに
女の曲がった角にたどり着き
そっと角を曲がった先を覗いてみた。

ちょうど女が
『ただいま〜！』と言って
家の玄関を入るのが見えた。


男はその女性が入った家の
玄関前に行ってみた。
表札には
【倉本　孝】とあり
その下に【美緒】と名前が刻まれていた。


『倉本さんの奥さん。』

男はそれを知れただけで
妙に幸せな気分になれた。