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せめて、今夜だけ…
第2章 欲心
その日、俺は不機嫌だった。
「桐谷…」
「いや、魚塚…、それは、その…」
商社マンとなれば多少の付き合いがあるのはわかってる。
酒は嫌いじゃないし、それも仕事のうちだと割り切っている。
だが、仕事以外で誰かと関わるのは好きじゃない。
煩わしいし面倒臭い。
それは同僚の桐谷がよくわかってるはずなのに…
「何なんだよ、経理部との合コンって…」
「頼むよ!今夜来る予定だった奴が急にドタキャンして来て人数が足りなくて困ってんだよ~」
朝っぱらからいきなり「今夜付き合って欲しい」と、両手を合わせて拝むように頼み込んで来たかと思えば…。
桐谷が合コン好きというのは前々から知っている。
いろんな部の綺麗所と酒を交えて騒ぐのが好きというのも知っている。
それについて俺は桐谷に何の文句もないし好きにすればいい。
だが、今回は別だ。
「はぁ…、だからって何で俺なんだ?他にも合コンに行きたがってる奴なんかいっぱいいるだろ?」
桐谷は俺と違って明るいし人当たりもいい。
桐谷が声をかければ人なんてあっという間に集まってくれるだろう。
いくら仲がいいと言ってもわざわざ俺みたいな無口な男に声をかける必要もない。
「それが…、女性側が…、あんまり乗り気じゃないみたいで…。お前が来るとなれば向こうも乗り気になると思うんだ…」