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せめて、今夜だけ…
第2章 欲心
よくそんな条件で合コンなんて企画したものだな。
乗り気じゃない女との合コンなんて、ある意味感心する。
はぁ、と溜め息を付きながらチラッと桐谷に目をやったが…。
あー、正直参加なんかしたくない。

「あのなー、桐谷…」
「マジ頼む!今度飯奢るから!」

いや、別に奢って欲しくもないが…。
しかし、桐谷には仕事で世話になったこともある。
桐谷がここまで頼み込んで来るなんて珍しい。
会社の女には興味はないし手を出すつもりもない。
桐谷の顔を立てる為に参加して、適当なところで帰ればいいか。
今日は残業もないし、誰かと会う予定もない。

「…今回だけだぞ?」
「マジでっ!?サンキューッ!!」

パァッと明るくなった桐谷の顔。

…女関係は煩わしく感じるが、こいつのこの笑顔は嫌いじゃない。
少なくとも、女みたいに駆け引きなんてしない、何も企んでいない純粋な笑顔だからだ。
常に一緒にいると疲れるだろうけど、退屈はしないだろうな。
顔も悪くないし、さっさと彼女でも作って落ち着けばいいのに。

俺にOKを貰えた桐谷は、意気揚々と自分のデスクに戻りパソコンと向き合っている。
今夜の合コンが楽しみなのか急いで仕事を終わらせようとしているのだろう。
あの情熱を常に持ってくれれば嬉しいのだが…。

しかし、合コンというか、飲み会に参加するのなんて何年ぶりだろう。
昔は異性を交えての飲み会にも参加した事はあったが、つまらなくて参加するのを辞めた。

忘年会や送別会、新人歓迎会、慰労会と会社行事ぐらいにしか顔を出さなくなった。

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