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せめて、今夜だけ…
第8章 甘い痛み
こっちはただでさえイライラしてるというのに、こんなつまらないイタズラに構ってる暇はねぇんだよ。
顔が見えないからって…、バカじゃねぇの?

「おい…っ、イタズラ電話なら――――――」

こんな時間にこんなタイミングで無言電話。
いつもならこんな電話は無視するところだが…、今日は無視出来る気分じゃない。
一言文句でも言ってやろうと思ったが…


次の瞬間、耳が一気に熱くなった。
心臓が大きく跳ね上がった。











『魚塚さん、ですか?』














「――――――――――っ!」








その声は…
スピーカー越しでも、すぐにわかってしまった。
わからないはずがない。


甘く甘い…、俺の耳元で何度も甘い悲鳴を上げていた。



「魚月…?」
『…はい』



―――――――ドクンッ…







着信の主は、魚月からだったのだ。








は?何で…?何で魚月が俺のスマホの番号を知ってるんだ?
Sirèneでは、番号交換なんてしてなかった。
魚月は俺の番号は知らないはずだ。

それに、魚月は今日は婚約者と一緒にいるはずだ。

なのに、何でだ…?






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