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第9章 天使と悪魔

「いっ、いやぁぁぁぁっ！！」





俺は力任せに魚月の衣類を引きちぎった。
前開きのブラウスのボタンがブチッとちぎれ、ボタンが床に散らばって行く。

嗚呼…、だから考えないようにしていたのに。
魚月の婚約者の事を考えなければ、会いに行きさえしなければ、こんなわかりきった嫉妬、しなくて済んだのに。

「やめて…っ！は、離して下さいっ！」

あらわになった魚月の諸肌。
白くて、柔らかな…、あの夜に触れた魚月の体。
この体にあの男が触れたのかと思うと吐き気がする。
いや、あの男だけじゃない。

過去の元彼達もそうだ。

魚月の体に触った男全員に殺意を覚えてしまう。



「ふざけないで下さいっ！早く退いて下さいっ！」

魚月だけは、泣かせたくなかったのにな…。



「俺さー、お前の泣き顔には弱いんだよな…」

そう言うと、俺は首からネクタイを外した。

「もっと泣かせたくなるよ…」
「――――――――っ！」





魚月の両手をネクタイで結ぶと、観念したかのように大人しくなってしまった。
いや…、怯えてるだけだろうけど。

「や、やめて…っ。やめて、下さ…」

カタカタと小さく震える魚月の足に手を這わせて行く。
恐怖のせいで魚月の体の震えがより一層大きくなって行くがその反応すら可愛い。