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せめて、今夜だけ…
第9章 天使と悪魔
あぁ、そうだな…、その通りだな…。




大の男が、涙を流してたらそりゃ驚くよな…。





魚月のそばにいたくて、悪魔に魂を売ったはずなのに、何で今更涙が零れるんだ…。
つくづく、自分の身勝手さに呆れる。
さっきまであんなに強気に魚月を脅迫してた癖に、1人になった瞬間に脆くなる。






自分のしてる事は間違ってるとわかってるのに、自分の中で勝手な思いが吠え叫んでいる。





魚月を自分だけのものにしたい。
婚約者なんか知らない。
結婚なんか知らない…っ!





でも、俺と魚月が繋がるにはこんな手段しかない。
どんな汚い手段を使ってでも魚月と離れたくない。

俺は手の平で涙を拭くと、何かを決意したかのようにホテルを後にした。
真夜中の風が頬に触れると、あまりの冷たさに痛みすら感じてしまう。

魚月の瞳に映っていられるのなら、俺は何だって出来る。
魚月の記憶に残っていられるのなら…、天使にでも悪魔にでもなれる。






俺は悪魔に魂を売ったのだ。
俺のこの腐った魂でいいなら、喜んでくれてやる。
その変わり…



悪魔でも天使でも、神様でも誰でもいいから










―――――――――魚月を、俺に下さい。






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