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せめて、今夜だけ…
第10章 溺れる魚達
人間の「欲」とは不思議なものだ。
満足したかと思えばすぐに枯渇する。
そう考えると、人間は永遠に満たされる事などないのかも知れない。
「うぃーす」
「やっべー、二日酔い~」
次の日、俺は何事もなかったかのように出社した。
いつもと変わらない朝の会社。
とてもじゃないが、昨晩魚月に乱暴を働いたようには見えない。
『最低…』
そう呟いた魚月の泣き顔が頭から離れない。
昨夜、自宅に帰ってからは一睡も出来なかった、
魚月を泣かせてしまった。
悪魔に魂を売った俺は、魚月を傷つけ、泣かせてしまったのだ。
散々遊んで来た俺でも、女を泣かせたことはない。
その俺が、最も大切にしたい女を泣かせてしまったのだ。
嫉妬、この感情にそんな名前を付けてしまえるなら楽だ。
その一言で済むならどれだけマシだろう。
そうじゃない…。
そんな単純な想いじゃない。
まさか、自分の中にこんな衝動があったなんて…。
何食わぬ顔でデスクのパソコンに向かい仕事に集中しようとした。
が、集中なんて出来ない。
魚月の事を考えると、頭の中が沸騰したかのように熱くなる。
何もしないでいると、嫌な事ばかり考えてしまう。
仕事に集中したいのに集中出来ない。