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せめて、今夜だけ…
第2章 欲心
シャンパンを飲み干し、料理もほとんど平らげて、みんなの腹が満たされたところで、桐谷が
「この後どうしますかー?」
と、声を上げた。

この店を出た後の事を言ってるのだろう。
さすがにこのお店でお開きというわけにもいかないし、桐谷と田中は気に入った女と盛り上がってるみたいだし、この流れは二次会に行く空気だな。

「じゃぁ、カラオケとかどうですかー?」
「それより、ボーリングとかー」

みんな二次会に行く気満々だな。
まぁ、場の空気も盛り上がってるし、二次会という流れになってもおかしくはない。

「悪いけど、俺は帰るよ」

そう言って、俺は席を立った。

「は?魚塚、お前マジで言ってんの?」

俺のその言葉に、桐谷と田中は驚いたような表情を見せた。

「申し訳ないが、明日も早いものですから」
「え~!魚塚さん、帰っちゃうんですか~!」

二次会への不参加に対して、女性陣も不服そうな顔。

「すいません、明日の会議で使う資料をまとめないといけないので」

その言葉に桐谷と田中は顔を向き合わせてキョトンとしている。
桐谷と田中は同じ部署だが、明日会議があるなんて知らなかったといった感じだ。

それもそのばず。
明日、会議があるなんて嘘に決まっている。
ただ、この場から逃げ出す為の口実なんだから。

「桐谷と田中は俺の分まで楽しんでてくれ」


反吐が出る。
これ以上、こんなくだらない酒に付き合いたくない。
そう思い、テーブルに置かれてる伝票を手に取り

「会計は済ませておく」
「え?ちょっと、魚塚…」

止める桐谷を無視して、俺はレジへと向かった。
この場の会計を持って置けば後々角も立たないだろう。




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