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せめて、今夜だけ…
第2章 欲心
「素敵な夢ですね。女性らしくて可愛らしい夢だと思いますよ」
「本当ですか~?わかってもらえて嬉しい~!」

ニコッと愛想笑いを浮かべ、表面上では紳士を演じたが…


くっだらねぇ。
つまり、余計な金は払いたくないわけだ。
男の稼ぎだけで楽して生きたいって魂胆が見え見えなんだよ。
必死に猫なで声でアピールしてるつもりなんだろうけど、馬鹿馬鹿し過ぎて笑えて来るわ。

真っ白なワンピースの胸元から覗かせている胸の谷間でフェロモンをチラつかせてるんだろうけど、下心が見え見え過ぎて、食指も動かない。

「魚塚さんって、経理部の女の子の間でも超人気なんですよ~!クールでミステリアスで、デキる男だってみんな噂してますよ~」
「それは光栄ですね」

残念だが、俺は君の名前すら数秒で忘れちまったけどね。


その後も、この女はただひたすらに自分を売り込むかのような猛アピールをしてきた。
休みは何をしてるだとか、料理が得意だとか、犬が好きだとか、甘いものが好きだとか、映画が好きだとか、パクチーが苦手だとか…

ぶっちゃけどうでもいい。
俺は適当に相槌を返したり、返事したり…。

「で、魚塚さんはどうなんですか~?」
合間に俺の事も聞いて来るが

「俺も甘いものは好きですよ。疲れた時なんかに欲しくなりますよね」
なんて、当たり障りのない会話で適当に場を繋げた。

紳士を気取って返事を返したが、こんなものほとんどが口から出任せだ。
今考えた適当な会話。
今日会ったばかりの女に本音やプライベートを語る必要なんかないからだ。
それでなくても、自分のプライベートにズカズカ入り込もうとして来る女は好ましくない。




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