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せめて、今夜だけ…
第11章 罰は蜜の味
「魚塚く…」
「先輩、すいません…っ!」







15年前のあの夏の日。
俺は見事に先輩にフラれた。
ショックのあまり、暫くは何も手に付かなかった。
今こうして、先輩に再会出来た。
少し前の俺なら喜んだだろう。
俺の青春時代のど真ん中にいた女性。
先輩は今でも俺の中では特別な思い入れがある女性。



そう…。
少し前の俺なら…。



俺は先輩をその場に残し、走り去ってしまった。
魚月と婚約者の事を考えると、この後先輩と飲み直す気分にはなれなかった。



俺以外の男が魚月に触るなんて、我慢出来そうにない。
勝手な事を言ってるのは百も承知だ。
だけど…。




「はぁ、はぁ、はぁ…」

先輩から少しでも遠ざかろうと走り出し、到着したのは人気の少ない路地裏。
途中、何度か後ろを振り返り、先輩が追いかけて来てないか確認した。
先輩はヒールを履いてたし、わざわざ追いかけて来るとは思ってなかったが。

「はぁ、はぁ…」

走ったお陰でさっきの苛立ちは幾分か軽減されている。
スポーツはストレスを緩和してくれると何かで読んだ事があるがあながちデマではなさそうだな。

スーツの内ポケットからスマホを取り出した。
かける相手は…、魚月だ。



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