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せめて、今夜だけ…
第3章 人魚
――――さて、と。
店を出た俺は、人で賑わう繁華街を歩いていた。
アテはないが、帰るにはまだ早いし、ふらふらと散歩するように。
本当はどこかで呑み直そうかと思っていたが、この辺は自宅とは逆方向の街。
あまり来たことがないし、どんな店があるかもわからない。
華やいでいるように見えるが、一見で入れるような店はあるのだろうか?
…それに、周りはカップルだらけだし。
「はぁ…」
いくら桐谷の頼み事とは言え、合コンに参加したことを後悔した。
やっぱり、俺はあーいう席は得意じゃない。
桐谷や田中みたいにユーモアがあるわけでもないし、仕事以外で愛想を振り撒く事も出来ない。
女の魂胆が見えた瞬間に、一気に気持ちが冷めてしまう。
それを全て受け止めれるほど、俺は寛大な男じゃないって事だ。
「はぁ…」
ため息を付くと俺の息が真っ白に変わる。
あー、この時期、この時間になると気温が一気に下がるからな。
頬に感じる風がやけに冷たい。
マジでどっかで呑み直して帰るか…。
適当に呑めそうな店を探し辺りを見渡していると。
「あ…」
俺の目は、ある店を見つけた。