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せめて、今夜だけ…
第12章 蛹、羽化の時
でも、今だけは…っ。

「んっ、んぅ…」

無我夢中で魚月の唇を貪った。
魚月からのキスに俺の理性までもが吹っ飛んでしまった。

「はぁ、あぁ…っ!」

魚月を抱き締めて、魚月の呼吸すら奪うほどに深く口づけて行く。
息苦しさから逃げようとする魚月の顔を押さえるように、夢中で…、一心不乱に。

「あぁぁっ!ん、はぁっ、んっ!」

唇を交える音、肌と肌がぶつかり合う音、吐息交じりのお互いの声、いやらしい音だけが部屋中に響く。
まるで2匹の獣が本能を剥き出しているかのように。

「魚月…っ、ん…っ」
「あぁ…っ、イッ…、あああ…っ」




誰かを求めることも、求められる事も嫌だった。
煩わしいし、後々厄介だし、楽な関係だけを望んで来た。
恋人とか結婚とか、自分には一生縁がないものだと思っていた。
俺の心はどこか可笑しいと思っていた。


「あ、あんっ!はぁ、…んっ!!」


だから、魚月に出会ってから自分の気持ちがわからなくて戸惑った。
この気持ちに何て名前を付ければいいのかわからなくて、困惑した。




魚月―――――…
お前に出会って、いろんな初めてが増えた。
誰かをここまで深く愛し、求めた事。
嫉妬で眠れなくなる事。



愛するということが、こんなにも怖い事だと、俺は知らなかった。









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