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せめて、今夜だけ…
第15章 人魚は海に還る
……あー、やってしまったな。
その次の日、俺は朝早くから会社のパソコンを見ながら昨夜の事を思い出していた。
あの後、先輩は何も言わずに帰ってしまった。
俺は罪悪感から先輩の方に顔を向ける事が出来ずロクな見送りすら出来なかった。
ただ、やってしまったと思ったのは先輩を振った事でも先輩を泣かせてしまった事でも、先輩に魚月との事を知られた事でもない。
俺の勝手な気持ちをぶつけてしまった事だ。
俺の気持ちを勝手に先輩にぶつけたはいいが、当の魚月は俺を嫌っている。
俺が勝手に想ってるだけなのにあの言い草…、これでは完全にストーカーだ。
魚月には翔太という婚約者がいるし俺との関係は半ば強引に結んだもの。
自分の知らないところで勝手にこんな事を言われても迷惑なだけだろう。
…先輩は昨夜の事を、市原社長や翔太にバラすかも知れない。
社長の息子の婚約者に手を出そうとしてるのだから予防線を張る意味でもバラしてるかも知れないな。
そうなったらいよいよ俺もクビだな…。
ジタバタするつもりはない。
クビになったらなった時だ。
クビが怖くて魚月に手を出せるかよ。
昨夜はいろんな事が起こりすぎて持ち帰ったはずの仕事にも一切手が付けられなかった。
早朝出勤で進めようかとも思ったがやはり思うように進められない。