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せめて、今夜だけ…
第15章 人魚は海に還る
慌てて進めなくてはならない事案でもないし、ゆっくり進めればいい。
それに…、ここのところ考えなくてはいけない事が多すぎる。
病み上がりだというのに、昨夜もロクに眠れていないしな。

全く進まないパソコン画面を見つめながらぼんやりしていると部署には少しずつ人が増えて来ていた。

「うぃーす」
「うっす。おはよう」

あぁ、もうそんな時間か…、と時計を見ると、もうすぐ就業開始時間。

「うっす。魚塚!」
「あぁ、桐谷」
「お前最近早いよな?急ぎの仕事か?」

自分より早く出社している俺が珍しいようだ。
マフラーを外しながら鞄から資料を取り出している。

「いや、別に」
「いやー、今日はやけに冷え込むな!予報だと雪が降るみたいだぞ?」
「ふーん」

最近いろいろ有りすぎて朝のニュースの天気予報も見れてないな。
でも確かに今朝は冷え込む。
空模様も悪かったし雪が降っても可笑しくない。

「はぁ…」

いくら考えてもいい案なんか浮かぶはずがない。
仕事の事も、魚月の事も、先輩の事も自分で解決するしかない。

「なぁなぁ、ところで!安西さんにちゃんと話してくれたか?」
「は?」
「ほら!合コン合コン♪」

あー、昨日言ってたあれか…。
こっちはそれどころじゃねぇんだよ…。
つーか、今は先輩と合コンなんか出来る状況じゃねぇし…。


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