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せめて、今夜だけ…
第16章 泡沫に泳ぐ魚
微睡んでいた魚月の瞳からはぼろぼろと涙が溢れ出す。
先程とは比べ物にはならない快楽が魚月の体を貫いたのだから無理もない。
指や舌よりも数段大きいものがいきなり挿入されたのだから。

「あぁぁっ、あ…っ、はぁんっ!」

シーツを握り締め体を反らせて、俺の欲を全身で受け止めている。
もう少し甘やかしてやるつもりだったのに、あんな表情を見せられたら我慢なんて効かない。

いや…、もっともっとと渇望してしまうだけだ。

「待って…っ!あぁぁんっ!待っ…」
「悪い…、無理…っ」

逃がさないように魚月の腰を掴み、本能の赴くままに腰を動かす。
魚月の訴えなんて無視するかのように。

こんなふうに魚月を抱きたかったんじゃないのに。
最後ぐらいは魚月を甘やかしながら抱きたかったのに。

「い、いやぁぁ…っ!ひっ、ああああっ!」

止まらない…。
いつもそうだが、今夜は歯止めが効かない。

「魚月、言えよ…。誰のものが入ってるのか…」
「ふ、ぁあっ!ああんっ…」
「翔太じゃない。お前の中に入ってるのは誰なのか…」


魚月の口から聞きたい。
聞かせて欲しかった。
今、魚月を抱いてるのは翔太じゃない。
今、魚月のそばにいるのも、魚月の瞳に映ってるのも、魚月の唇に触れてるのも

魚月の中にいるのも誰なのかも…。


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