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せめて、今夜だけ…
第16章 泡沫に泳ぐ魚
「やだ…っ、そ、そんなの…っ、あぁぁんっ!」
「言わねぇと、もっと酷くするぞ?」


何だろうか、この感覚は。
大事にしたいのに苛めてしまう。
誰よりも大切で愛しい女なのに、壊したいと思ってしまう。
好きだと思えば思うほど、汚してめちゃくちゃにしてやりたくなる。

こんな矛盾した気持ち、今まで知らなかった。
大事にしたい女なんて今までいなかった。
めちゃくちゃにしたい女も今までいなかった。
ただ、性欲を処理するだけの行為だった。
余計な感情なんか一切必要なかったのに。


「ああっ、あんっ…、う、魚塚さ…っ、魚塚さんのモノが…、あぁっ、私の、中にぃ…っ」

顔を真っ赤にさせながら、涙を溢しながらたどたどしい口調で答えてくれた。
恥ずかしさからか、魚月はすぐにそっぽを向いてしまったが。

魚月の反応を見ながら、俺は心の片隅でぼんやりと考え込み気づいた事がある。







――――あぁ、そうか…。

本気で誰かを愛するということはこう言う事か…。




自分が自分で無くなってしまう。
余裕も理性も、何もかも無くなってしまう。
ただ、本能的に求めてしまう事だ。




「ああっ!あ、ぐっ!あんっ!イッ…、イクッ…」

夢中で腰を打ち付けていると、気づけば魚月は絶頂を迎えようとしている。



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