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せめて、今夜だけ…
第16章 泡沫に泳ぐ魚


俺は黙ったまま、先輩に体を預けた。
まだ魚月を抱いた余韻が残る体で、先輩に倒れ込んでしまった。

それが先輩に対して失礼な事だとわかっていても。

「大丈夫、大丈夫…」

先輩の優しい声が俺の耳に届くが、何も大丈夫なわけがない。
この想いはどうやっても消えない。

「時間が全て解決してくれるから…」






時が経てば、この痛みは和らいでくれるのか?
時が経てば、魚月への想いも薄らいで行くのか?

あとどれだけ、涙を流したら忘れさせてくれる?
どれだけの夜を越えれば忘れさせてくれる?

誰に聞いたところで、そんな事わかるはずない。
今はただ、何も考えたくない。
何も…。






――――――ポチャン…。

魚月との思い出を葬るように、スマホを海に沈めた。
心が凍ってるうちに、何もかもを手放したかった。

スマホも、魚月との思い出も…。









さようなら、魚月…。











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