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せめて、今夜だけ…
第18章 彼方
時計の針が進み、時間が経つに連れて心臓が高鳴る。
早く先輩に会って真実を知りたいのに、知りたくない気持ちもある。
知るのが怖い…。
でも、もし本当に魚月が…―――――。


逸る気持ちを抑えられない。
先輩に電話しようにも、もしかしたら仕事が忙しいのかも知れない、そう思うと電話をかける気になれない。

1人でいると嫌な考えが頭を巡る。
精神的に参ってしまいそうになった時だ…。




―――――――ピンポーン…。




「………っ!」

部屋のチャイムが鳴り響いた。

カメラで確認しなくてもわかった。
先輩が来たのだと。

それは、待ち続けていた瞬間のはずなのに、今にも口から心臓が飛び出しそうなほどに怖い瞬間でもあった。

「は、はい…」

リビングで返事したって玄関に届くはずがない。
あー、俺すっげーテンパッてるな…。

逸る気持ちを抑えて、高鳴る心臓と脈を感じながら駆け足で玄関へと急いだ。
待ちわびた訪問者を迎えるために。
心の準備なんて出来てない。
先輩の話しを聞くのに心の準備なんか出来るわけない。

だけど…。



―――――――カチャ。




ドアを開けると、そこにいたのは…、先輩だった。

「こんばんわ」
「……お待ちしてました」

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