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せめて、今夜だけ…
第21章 嘘と罠




今まで、どんな女を抱いても満たされる事などなかった。
抱けば抱くほど虚しく感じていた。
俺はずっと何かを待っていたように思う。
俺の乾いた心を満たしてくれる何かを…。
それが何かはわからない。
だが、俺は待つことに慣れている。
今までずっと待ち続けて来たんだから。



そして、やっと見つけた。



――――「はい。ありがとうございます。その件につきましては後日、契約の際に。はい、失礼します」



あれから…、何日経ったっけ?

俺は意識的に忙しいふりをしていた。
まぁ、仕事なんて探せば山のように出てくる。

余計な事を考えないように、自ら忙しい状況に身を投じていた。
それは、見てる周りが心配になるくらいに。
しかし、忙しければ忙しいほど俺は調子が良かった。
時間が早く過ぎてくれるから。


「おい魚塚、お前最近どうしたんだよ」
「あ?何がだよ」

新規契約の電話を終えデスクに戻る俺に桐谷が心配そうな顔で訪ねてきた。

「何がって、最近頑張り過ぎじゃね?」
「別に。どっちかっつーと絶好調だよ」
「いや、それならいいんだけど。あんまり無理すんなよ」

桐谷の心配も最もだ。
あの日と同じだ。
魚月と別れたあの雪の日…。

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