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せめて、今夜だけ…
第21章 嘘と罠
嫌なことを考えないように仕事に打ち込む。
恋愛やプライベートが上手く行かないと仕事に打ち込むなんて、公私混同も甚だしい。
あの時は無理をし過ぎて結果、体を壊してしまい周りに心配をかけてしまった。

だけど、こうでもしないと逃げられない。
逸る気持ちを抑えられない。

魚月は翔太と別れた。
婚約破棄の噂は本当だった。
気持ち的には今すぐ魚月を迎えに行きたい。
だが、魚月が今どこにいるかがわからない。
それに、婚約破棄の理由もハッキリしていない。
魚月の口から事情を聞かない事には身動きが取れない。

考えなきゃいけないこと、片付けなければいけない問題が多すぎていっぱいいっぱいだ。

あれから、先輩からの連絡もない。
何かわかればすぐに連絡すると言ってくれていたのに、だ。
まぁ、仕方ない。
先輩だって何かと忙しい身だ。
俺の為に時間を割いたり出来ないだろうし、俺も先輩にそんなコソコソした真似はさせたくない。

あの雪の夜と同じで、仕事に打ち込み
時間や日にちの感覚がなくなっていく。
先輩と最後に会ったあの日から何日経ったんだろう。
少しの間何もかもを忘れていたくて仕事に集中しているが、ふっとした瞬間に思い出してしまう。

期待してしまう。


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