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せめて、今夜だけ…
第22章 核心
何の因果か、それとも神の悪戯か。
まさか、こんなところで翔太に会えるなんてな…。
「あのー、魚塚さん?」
「はい?」
「あの、こ、ここは…?」
恥ずかしそうに辺りを見渡す翔太。
まぁ、それもそのはずだ。
場所を移した俺達がやって来たのは、小洒落たバー…、ではなく、ただのカフェなのだから。
周りはカップルや女性同士の客ばかり。
そんな中にスーツを着た男が2人連れでやってきたのだから。
周りからは不思議そうな目で見られている。
翔太からすればこんな場所に来るのは恥ずかしいだろうが、今の俺には怖いものはない。
「今日は酒をという気分じゃなかったもので」
「は、はぁ…」
何かを言いたげだな翔太。
男が2人連れたって行くとすれば酒場が普通だろう。
しかし、今日はそういう訳にはいかない。
酒で酔っぱらって口をつぐまれてしまっては元も子もない。
聞きたい話しも聞けないかも知れない。
「とりあえず、何か注文しましょうか?」
「は、はい」
注文すると言っても酒ではなくコーヒーだが。
まぁ、仕事終わりに酒ではなくコーヒーで一服というのもたまには悪くないだろう。
エアコンが効きすぎて少し肌寒い店内。
体がすっかり冷えてしまったな。
「じゃあ、僕はアメリカンのホットで」
「じゃあ、僕も同じので」
近くにいた店員にアメリカンを2つ注文した。
店員も男2人の俺達を見て不思議そうな顔をしていた。