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せめて、今夜だけ…
第22章 核心
「ところで、翔太さん――――――」

俺は徐に口を開いた。
俺が翔太をここに連れて来たのは…
酒場ではなく、わざわざ恥を忍んで男2人でこんなカフェに落ち着いたのは…。



「魚月さんはお元気ですか?」

魚月の事を聞くためだ。



開口一番に魚月の名前を出してしまったが、怪しまれてないだろうか。
もっと他の話しで場を和ませてからの方が良かっただろうか。

「あ、あぁ。魚月ですか…」

魚月の名前を出した途端、翔太の表情が一変した。



それは、動揺や焦りを隠そうとしてる表情ではない。
不敵な含み笑いを帯びた悪戯っぽい笑顔だ。

隠せるか?いや、隠しきれないだろうな。
どんな話しを聞かせて貰えるか楽しみだ。
そもそも婚約破棄なんて大それた事をしておいてその余裕の表情は何だよ。

「そう言えば、魚塚さんは魚月とは古い友人でしたっけ?」
「……まぁ」

あぁ、そう言えば…。
以前、魚月と翔太と出くわした時、翔太に怪しまれないようにその場しのぎでそんな嘘を付いた覚えがある。

「魚月から何も聞かされてないんですか?」

その発言に、一瞬激しい苛立ちを覚えた。
「お前は何も知らないんだな」と見透かされ馬鹿にされた気がした。

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