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せめて、今夜だけ…
第4章 飢餓
あんな女に構う事はない。
今日は買い物を済ませてさっさと帰る予定だっただろ?
たまたまドラッグストアで出会しただけだ。
あっちだって急いでるみたいだし、ほっとけばいい。


なのに、胸の奥がチリチリと痛い。
腹立たしいのか何なのか、自分でもわからない。



――――――「おいっ…」






気づくと、俺は無意識のうちに魚月を呼び止めていた。
その瞬間、ハッと我に返ったが、もう遅い。

「はい?」

3、4歩歩き出していた魚月がこちらを振り返る。
しかし、その顔色は気だるそうな表情。


「あ、いや…」

呼び止めたはいいが、これと言った用はない。
つーか、自分でも何で呼び止めたのかわからない。
ただ、正体がわからない何かに突き動かされたように思わず声が出てしまったのだ。


「…何ですか?」



な、何だこの女…。
昨夜は俺の手を振り払って、今は今で気だるそうにしやがって…っ。
さっきの笑顔は作り笑いかよ…っ。

「き、昨日の件だが――――っ!」
「昨日?」

ムリヤリ引っ張り出した話題は昨夜の事だ。
昨夜の事でもやもやしていたのは事実。

「は、初めての客に向かってあの態度は無ぇだろっ!」
「……あー、あの事ですか?」




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