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せめて、今夜だけ…
第23章 不協和音
次の日、会社に行くとそこにはいつもの風景が広がっていた。
俺にコーヒーをぶっかけられた翔太が、俺の無礼を訴えやしないかと心配したが…。
社長や部長からの呼び出しがないところを見ると翔太は何も言って来てはいないようだ。
あいつも、今までの女遊びをバラされるのは嫌だったのだろう。
あいつもそこまで捨て身になるほどバカじゃないって事か。
社長や部長に呼び出される事のないままいつもの業務が始まる。
俺はいつも通り自分の仕事を眈々とこなしていた。
俺はもう充分に待った。
身を切られるほどの悲しい別れも味わい、今日まで必死に魚月を忘れようと努力して来た。
なら、もういいよな?
俺が魚月を奪っても。
俺が魚月を幸せにしても。
もう、翔太になんか渡さない。
昨日、電車を待つホームでそう思っていた。
翔太が魚月を裏切っていたのなら、俺ももう遠慮しない。
パソコンのキーボードを叩きながらそんな乱暴な事を考えていたが、肝心の魚月の居場所がわからない。
この東京にいるのか?
それとも、どこか遠くに行ってしまったのか?
まさか、日本にいないなんて事は…。
いや、どこにいたって見つけてみせるさ。
例え魚月が嫌がっても、今度は俺が魚月のそばに。
魚月の事ばかり考えてるこの頭。
そんは俺を見透かしたように、背後から桐谷の声が聞こえた。
「何か、今週はやけに忙しいよな~」