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せめて、今夜だけ…
第23章 不協和音
「え?あぁ、そうだな…」

確かにここ最近、業績が向上してるのかやけに忙しい。
俺は自主的に残業してたし、自分の仕事はさっさと片付けてたからあまり忙しく感じなかったが。

「俺は残業してるから気づかなかったよ」
「つーか、お前最近ずっと変だぞ?」

桐谷のその言葉に俺は思わずキーボードを叩く手を止めてしまった。

変…?
桐谷から見て俺は変だったのか?

「俺が変?」
「あぁ。いきなり会社を飛び出してどっか行っちまうし、市原グループの事もしつこく聞いてくるし、狂ったみたいに仕事一筋になっちまうし…」

桐谷が言った事全部、俺には身に覚えがあることばかりだ。
確かに桐谷みたいな第三者から見れば、俺の行動は不審者そのものだ。

「お前まさか、何かヤバい連中とつるんでるとかじゃ…」
「んな訳あるか!バカなこと言ってねぇでさっさと仕事しろよ」

俺のその台詞に桐谷は渋々自分のデスクへと戻った。
だが、全て図星に近かった。
さすがの桐谷も、まさか夢にも思わねぇだろうな。
俺が市原社長の息子の婚約者とやべぇ関係だったことは。
そして、婚約破棄したとは言え、元婚約者を奪うことを目論んでいるなんてな。

しかし、桐谷の人間観察力と記憶力には参った。
俺の行動をそこまで覚えてるとは。

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