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せめて、今夜だけ…
第23章 不協和音
「戻るのが遅くなり、申し訳―――――」
「あーいやいや、いいんだそんな事は」
「は?」

部長に詫びようと姿勢を正したが、部長から返って来たのはお叱りの言葉ではなかった。
それに、表情からするに、怒ってるというより…、喜んでるようにニコニコしている。

え?何でだ?

「実は今、社長に呼ばれてね…」
「あ、はい…」
「喜べ!大出世だぞ!私も上司として誇らしいよ!!」

俺の肩をバンバンッ叩きながら興奮している。
いや、痛いんですけど…。


社長に呼ばれたと言うことは、社長室に行ってたのか。
じゃあ、トイレでの俺の会話は聞かれてねぇか。
つーか、出世って何の話しだ?
俺は訳がわからず、叩かれた肩を痛めながらポカンッとしているだけ。






なぁ、神様。
俺は本当にあんたに感謝してたんだ。
魚月と出会わせてくれた事に、本当に感謝してたんだ。
なのに、なぁ?






「魚塚君の功績を見込んで、フランス支社への移動が決まったんだ」







―――――――――。











なぁ?
何であんたはいつもそうなんだ?
もう少しで魚月に手が届きそうなところで
どうしていつも…。








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