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せめて、今夜だけ…
第23章 不協和音


トイレを出て廊下を歩いていると、俺らしくもなく顔がニヤけてしまった。
すれ違う奴らに見られないように俯いては誤魔化した。
笑いを我慢するのがここまで辛いなんて知らなかった。
それに、こんなに幸せな気分も初めてだ。


魚月…。
お前もまだ俺の事を想っててくれてるだろうか?
恋や愛じゃないにしても、俺から会いに行ってもいいだろうか?
俺がそう問いかけたら、魚月はまた怒ってはぐらかすんだろう。
そして、またいつもの憎まれ口の言い合いが始まるんだろうな。


そんな魚月との思い出を振り返りながら廊下を歩いていると



―――――「あぁ、魚塚君!ちょうどいいところに…」
「……?」

後ろから俺を呼び止める声がした。
足を止めて振り返ると、そこにいたのは

「あ、部長…」

そこにいたのは、駆け足でこちらに向かってくる部長だった。
何で部長がここに?
今は業務時間中のはずじゃ?
もしかして、俺の離席時間が長くて探しに来られたんじゃ…。

「あ、あの…」

やっべ。
いくら何でも離席時間が長すぎたか。
こりゃ謝って置いた方がいいな。
つーか、トイレでの話し、部長に聞かれてねぇよな?
さっきのニヤけ顔、バレてねぇよな?

今も若干ニヤけちまってるから、何とか誤魔化さねぇと。


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