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せめて、今夜だけ…
第24章 綻び
Bijouxの本社はフランスにある。
その歴史は長く、数々の偉人がBijouxの家具を使ってたと聞く。(本当かどうかは知らない)

フランス本社で働くというのは、Bijouxで働くものなら誰もが憧れる事だ。
限られた人間だけが選ばれ、働く事が許される夢の職場。
そして、フランス本社に移動というのは出世を約束された夢街道。

こんな美味しい話しを断るとしたらそれは余程のバカだと言われてるぐらいだ。

そして、今俺は…、誰もが憧れる出世街道の片道切符を手渡された。




「すげぇな、魚塚!フランス本社だってよ!!」

昼飯時、興奮気味に語りながら輝く眼差しで俺を見つめる桐谷。
興奮してるせいか全然箸が進んでねぇな。

「あぁ、まぁ…」
「いいよな~、向こうは給料も年収も日本と桁違いだもんなぁ~、セレブライフを約束されたようなもんだよな~。有休消化率も高いしなぁ~。いいよな~。美人も多いだろうなぁ~」

いいよな~を何度も繰り返しているが、桐谷は出世したいというよりフランスの美女が目当てだろう。
白い素肌にブロンドヘアー、青い瞳、それが目当てなのだろう。

「でも、フランスに移動となったらしばらくは日本に帰って来れねぇよな?」
「最低でも5年はあっちにいねぇとな…」

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