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せめて、今夜だけ…
第24章 綻び
「5年!?…じゃあ、しばらくはお前のクールな小言も聞けねぇのか~」

クールな小言で悪かったな。
それに、難しい同僚がいなくなって案外済々してたりしてな。



あぁ、何だろう…。
この上なく光栄で嬉しいはずなのに、まるで心が凍ったみたいに何も感じない。
桐谷と違って、さっきから全然箸が進まない。
つーか、食欲が出ない。

魚月と別れた半年前の冬。
あの日から、魚月を忘れる為に必死で働いてきた。
ただがむしゃらに、何も考えないように、忙しさで頭をいっぱいにして来た。

お陰で社長賞をもらった事もあった。
その功績が認められてのフランス本社への移動なんだろう。

でも、何も嬉しくない。



最低でも5年はフランス…。
その時の仕事の都合ではもっと延びるかも知れない。
それはその時になってみないとわからない。

5年は日本を離れなくてはならない。
そして、それは…
魚月とも会えなくなってしまうということだ。

何でだ?
もう少しで手が届きそうなところまで来たのに、またもや見えない何かに邪魔をされた気分だ。
今度こそ、誰に遠慮することなく、魚月を迎えに行けると思っていたのに。

「おい、魚塚~、何さっきからボーッとしてんだよ?まだ実感がわかねぇか?」

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