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せめて、今夜だけ…
第27章 海底、奥深く…
――――「一緒にフランスに来て欲しい」
情事を終え、疲れ果ててぐったりと微睡む魚月の頬を撫でながら俺は魚月にそう問いかけた。
やっと想いが通じ合ったのに、このまま魚月と別れたくない。
魚月は翔太と別れたし、もう誰に遠慮することもなくなったのだから。
このままずっと魚月といたい。
「フランスに…?」
裸のままベッドに横たわりながら、俺の話しを聞いていた魚月。
朦朧とした意識で俺の話しを理解出来ているのかどうか。
「もう、お前と離れたくない。このままずっと…」
魚月の額に自分の額を軽くぶつけ、ずっと思っていた言葉を呟いた。
会社からの命令とは言え、魚月を置いてフランスになんか行きたくない。
いい大人の癖して、子供のような我が儘を言う自分が情けない。
「フランス…か」
魚月はぼんやり天井を見上げている。
意識が段々と戻って来ているのだろう。
どうして俺は、こんなに必死になってるのか。
俺はきっと、魚月の答えを知ってるからだ。
魚月はそういう女だ。
魚月の性格は、俺が誰より知っている。
「ごめんなさい。魚塚さんとフランスへは行けないです…」