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第27章 海底、奥深く…

愛してる。
愛してるよ…。
誰よりも、ずっと、ずっと…。



こんな月並みの言葉しか頭に浮かんでこない。
もっと他に伝えたいことはあるのに、言葉に出来ない。




「魚塚さん…」

鼻の奥にツンッと込み上げる涙を抑えるので必死だった。
あの冬の夜だって魚月には涙を見せぬように踏ん張ったというのに。

「魚月…」
「私もです…」








――――――――…っ。

魚月の頬に触れる俺の手に、柔らかな魚月の手が重なる。
それはまるで、優しい何かに包まれるように。
俺の想いに答えてくれるように。





「私も愛してます。魚塚さん」










お前は本当に残酷な女だな。
初めて俺の前に現れた時は人のもので
やっと俺のものになろうとしてるのに、やっぱり手に入らなくて
それなのに、その唇で俺を愛してるという。
いつもいつも、見えない何かに邪魔されて
何も気にすることなく愛し合うことなんて出来ないというのに。

「ひっでぇ女だな…」
「魚塚さんも、しょーがない人です…」

似た者同士だ。
お互いに不器用で、思ってることを素直に言えない。