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せめて、今夜だけ…
第28章 満月と魚
俺はいつも、何事も迷わず決断してきた。
特に仕事や自分の人生に関わることは。
だから、今回の決断も…。
俺は自分の出した決断を後悔したくない。
「お前がいなくなるのは寂しいよ」
会社で桐谷が寂しそうな顔で俺に告げた。
桐谷…、こいつとは入社当時からの付き合いだ。
鬱陶しく感じることもあったが、俺にとっては唯一本音で語れる同僚だった。
親友だった。
その桐谷とも、もう当分は会えなくなってしまう。
「全く、由之にはいつも驚かされるわ」
安西さん。
旧姓、風間先輩。
俺の学生時代の元カノで、俺のマドンナ。
高嶺の花だった。
先輩ともいろんな事があった。
魚月と別れたときも、俺を1番に支えてくれた人。
今回の俺の決断にも、何も言わずに呆れ顔で送り出してくれた。
俺にとって先輩は最高の親友だ。
俺は会社にある自分の荷物を纏めた。
これで心置きなくいつでも旅立てる。
全ての準備は整ったんだ。