この作品は18歳未満閲覧禁止です
- 小
- 中
- 大
- テキストサイズ
せめて、今夜だけ…
第28章 満月と魚
魚月の実家。
とある田舎の山奥にある、有限会社 羽田工業。
小さな町工場で主に建築資材のネジを扱ってる。
昔はそれなりに栄えていたらしいが、時代の流れのせいかどんどん規模は縮小され
今では倒産寸前まで追い込まれている。
そして、俺の愛する人はそこで頑張ってる。
両親の工場を守るため、自分の身を差し出し
女としての幸せをも投げうる覚悟で働いている。
今も、この瞬間も
魚月は1人で頑張ってる。
両親の工場を守るために…。
――――――「えー、今日からこの羽田工場で働くことになりました、魚塚由之です。よろしくお願いいたします」
小さな町工場、朝の朝礼で簡単な自己紹介をすると
魚月の両親と思われる老夫婦に数人のパートのおば様達から暖かな歓迎の拍手をもらった。
自己紹介なんてBijouxに入社した時以来だな。
しかし、当の魚月は青ざめた顔で立ち尽くし、呆然と俺を見ていた。
「は、はぁぁぁぁっ!?」
暖かな拍手の中、今にも卒倒しそうな魚月の声が響いた。
まぁ、当然か。
俺も俺の決断と行動力に驚いてる。
たまには俺が魚月の予想を裏切るのも悪くないだろう。