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せめて、今夜だけ…
第1章 ルール
――――――「う、魚塚さん、あの…」
情事を終えた女はシャワーも浴びず、メイクも直さず、身なりを整え、場の悪そうな表情で俺の前に現れた。
俺は俺で情事の疲れからか、煙草を吸いながらベッドに腰をかけている。
今は起き上がる気力がない。
まぁ、男というものは情事を終えたあとは大体こんなものだ。
「ん?」
「あ、あの…」
あー、最中のキスを拒絶されたんじゃ女としてのプライドはズタズタだろうし、気まずいだろうな。
その気持ちはわからなくもないが、悪いが俺はそこまで気遣えるほどの男じゃない。
正直、面倒。
「う、ううん。何でもない…」
冷たい俺の返事と視線に、女はそれ以上、何も言わなくなった。
こんな俺に何を言っても無駄だって、この女も薄々気づいているのだろうな。
そこまでバカじゃねぇみたいだな。
「それじゃ、私は帰るから…。また、電話してね…」
女はそう言うと、俺の返事も聞かずに、逃げるようにそそくさと部屋を出ていった。
いつもそう。
終わった後の甘い会話や時間なんて俺には必要ない。
どんな女が相手だろうが、出すものを出したら後はどうでもいい。
用はない。
「ふぅー…」
煙草を吸いながら窓から見える景色を眺めながら思っていた。
すぐ呼び出せて便利な女。
何度も何度も身体を重ねて来たが、あの女ともここまでだな。