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せめて、今夜だけ…
第6章 刹那
話の途中で意識がなくなっていく俺を心配してるかのような声を出した魚月だが
ただ単に眠いだけだとわかった途端にホッとしたのか、魚月の声が聞こえなくなった。

こんな幸せな行為は初めてだ。
終わった後の脱力感も疲労も、とても気持ちいい。
隣にいる魚月の小さなぬくもりすら心地いい。

「魚塚さん…」

何もかもが心地よくて、俺は久しぶりに安心して眠りに落ちることが出来た。

もっと、もっと魚月の事が知りたかった。
一人暮らしなのか?怒られるかも知れないが年齢は?
好きな食べ物や、趣味とか、もっと魚月の事をいろいろ知りたい。

現実と眠りに落ちる狭間で俺はいろんな事を考えていた。


明日の朝起きたら、出社前にルームサービスを取ろう。
コーヒーでも飲みながら魚月の事をいろいろ聞こう。


そう言えば、誰かと「夜明けのコーヒー」を飲むのも初めてだな。


そんな事を考えると、身体中が照れくささでむず痒くなって来る。







魚月の気持ちも考えないで………。







「魚塚さん、ありがとう。自由な時間はもう終わり…」










俺は初めて感じる暖かな幸福感の中で、何も考えないままに眠りに落ちた。
これからの事なんて何も…。
考えなきゃいけない事だったのに――――――。










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