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せめて、今夜だけ…
第6章 刹那
今まで味わった事のないような時間。
こんな幸せは知らなかった。

俺の隣で、俺の腕枕で横になってる魚月を見ていると、何とも言えない幸福感が包んでくれる。

もっと魚月の笑顔を見ていたい。
もっと笑わせてやりたい。

「魚塚さん、明日仕事は?」
「あー、仮眠を取ったらこのまま出社するよ」

時刻はもうすぐ朝の4時だ。
外はまだ暗いし雨も降ってる。
今から自宅になんて帰りたくないし、何よりもう少し魚月のぬくもりを感じていたい。

「魚月は?」

そこで俺はハッとした。

魚月には婚約者がいるし、魚月の帰りを待ってるのではないか、と。

「大丈夫ですよ。婚約者と言っても名ばかりだし、別に一緒に住んでるわけでもないし」
「え?でも…」

この前、シェービングの替刃買ってなかったっけ?
一緒に住んでるわけじゃねぇのか?

「あの日はたまたま私の部屋に遊びに来てただけです。髭反りは前に遊びに来たときに置いて行ってたし」

なるほどね。
女の部屋に髭反りの替刃なんか置いてあるわけないしな。

「へぇ、じゃあ魚月は一人暮らし……」
「魚塚さん?」


あー…、ダメだ、眠い。
ここ最近仕事が忙しくて、まともに眠れてなかったからな。
それにもうこんな時間だ。
眠くて当然か。


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