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舞い降りた天使
第8章 失望
「…っ……」
カーテンの隙間から見える真穂は
俺を見つめながら言葉を詰まらせた
「真穂…どこも痛くない?
ケガしたりしてない?
さっちゃんも無事?」
俺が一番心配してることだ
もしも
真穂やさっちゃんが
ケガでもしてるなら
俺はすぐにでも部屋まで…
「…大丈夫…
ケガとかはないから」
「ほんとに?」
「うん…ほんとに」
「…よかった…」
とりあえずホッとした俺は
前のめりだった身体を
シートにもたれさせて
真穂を見上げた
「じゃあ
ケガじゃない何かがあったんだよね」
「……」
「真穂…」
「……」
言葉を選んでるのか
話すことを迷っているのか
ガラス戸に手のひらをぴたりとつけたまま
真穂は黙っていた
その手を握りたい
その身体を
抱きしめてあげたい
見える距離にいるのに
触れられないなんて…
何もしてやれないなんて…
「さっちゃんはもう寝たの?」
「…うん。
さっきまでは眠れなくて
巧くんの写真
ずっと見てたの」
「そうか…」
眠れなくて
ということは
さっちゃんに何かあったってことだよな
俺はそう想像するだけで胸に痛みが走った
「また巧くんと
遊びたいって」
「嬉しいな」
「約束しておいてって
頼まれたの」
「じゃあ約束な。
俺、絶対約束守るから」
「うん」
「真穂」
「…なに?」
「真穂も、眠れないんだろ?」
「……うん」
「真穂」
「…ん?」
できることなら
真穂が眠るまで
抱きしめてあげたい
癒してあげたい
全力で
優しくしてやりたい
そして
何があったのか
話を聞いてあげたい
「ここまで
降りては来られないよね」
「………」