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舞い降りた天使
第1章 レモングラス
そう言って
栗原くんは真面目な顔で私を見つめる
その視線がなんだか辛くて
私は椅子を横に移動させ
栗原くんから少し離れると
視線を外してお弁当を見つめた
もちろん
見られたくない荒れた手は
膝の上で握りしめたままで。
「ひとことで言うと…」
「……」
きっと栗原くんはこう言う
『ハーブティー買ってください』
そうに決まってる
そして
もう二杯も飲んでしまってる私は……
一箱だけ買ってしまうかもしれない
でもそれで最後にしてもらおう
私、そんなお金持ってないって
正直に話そう
そう決意した時
栗原くんの落ち着いた声が
左耳に届いた
「友達になりたくて」
え?
あ、そ、そうきたか
友達になって
断れない状況に追いつめる作戦?
だめだめ
今きっぱりと断らないと
「栗原くんが
わ、私と友達になりたいなんて
おかしいよね?
本当はもっと違う理由があるんじゃない?」
すると栗原くんは
椅子に座ったまま
私の方に身体を向けると
ちょっと困った顔で私を見つめた
「ごめんなさい」
やっぱり…
「徳永さん結婚してるから
やっぱガード固いですね。
だからもう正直に言います」
やっぱり
利用しようとしてたんだ
私のこと
「俺
徳永さんのこと
放っておけませんでした」
……え?
どういうこと?
意味が分からなくて
私は返事をすることもできず
ただただ
その意味を考えていると
栗原くんは
少し低い声で
続きを話し始めた
「心配で仕方なくて…つい」
「…え?心配?」
「俺、聞いちゃったんです。
先週、廊下で徳永さんが電話で話してるの」
……電話?
「さくらちゃんのことで話してましたよね?
多分……先生か誰かと」
……あぁ…大野先生だ