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舞い降りた天使
第20章 返信
「お母さん」
しばらくして
桜が目を覚ますと
まだ側にいた私を見つけて
嬉しそうに笑った
「おはよ。
なぁに?」
「ずっといたの?」
「そうだよ?」
私はその
桜の満足そうな笑みに
ホッと胸を撫で下ろした
私の前だけでも
素直に笑えるならよかった …と
「夢見たの」
「どんな夢?」
「タクニイの夢」
私も見てたよ
眠ってはいなかったけど
「そうなんだ。
どんな夢?」
「ん〜…お話しした」
「お話し?」
「うん。
楽しかった。
でもどんなこと話したか忘れちゃった」
桜はそう言って
クスクスと笑った
「夢って忘れちゃうよねー」
「うん。
ねぇ、お母さん」
「何?」
「タクニイといつ会える?
タクニイに会いたいな」
桜…
「栗原くんお仕事で忙しいの。
いつ会えるかは…
ちょっと分からないな」
「そうなんだ…」
桜の
小さなお願いだった
叶えてあげたいけど
それさえ叶えてあげられないことに
私はまた自己嫌悪におちいる
無力だな…私
「ごめんね?」
「お話し、したいな…」
お話し?
そうだ、お話しだけなら…
「電話、してみる?」
「したい!
電話する!」
桜は嬉しさのあまり
布団から飛び起きていた
やっぱり
お腹は痛くないらしい
そんなこと分かっていたけど
そのことを私は
一切口にしなかった
そんな嘘をつくということは
それだけの理由があるということだから
「分かった。
でも夜にね。
今は仕事してるから」
「うん!」