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最後の恋に花束を
第1章 四年ぶりの春

彼が私をエスコートするかの様に店のドアを開ける。
すると、店員は彼の顔を見るなり " お待ちしておりました " と爽やかな笑顔で予約席まで案内してくれた。


「 結構来るの? ここ。」


顔見知りのようなその対応に驚きつつ、上着をハンガーに掛けながら私は彼に問いかけた。


『 んー まあね。』


その適当な返答に、ふぅん…と簡単に頷く。
そうこうしていると、店員さんが乾杯酒のスパークリングワインを持ってきてくれた。


『 えーと…今日は何祝いだっけ? 』

「 久し振りの再会祝いじゃない? 」

『 いやいや、違うだろ〜。ほれ、見せてみ? 』


冗談を言い合うかのように笑う彼。
見せてみ?と左手の薬指を指差す。
恥ずかしながらも、何のことかは分かっていた。


「 ん〜… はいっ 」


言われた通り左手を差し出すと、薬指には先日恋人から貰ったばかりの婚約指輪が輝いていた。


『 おー…いいじゃん。割とシンプルで 』


本当にそう思っているのか、思っていないのか分からない表情で彼はそう言った。それはよく見る表情でもあり、見たくない表情でもあった。


「 あんまり派手だと、付けるのも恥ずかしいからね… 」

『 ははっ、可奈はそうだよな 』


まるで、私のことを良く知っている様に話す彼。側から見れば、恋人同士と思われてもおかしくない。けれど、彼との関係は " 友人 " だ。

" とりあえず、婚約 おめでとう "

彼は微笑みながらそう言って、私の右手に握られたグラスと自分のグラスを チンッ と鳴らした。

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