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最後の恋に花束を
第5章 大学一年の春

『 俺んち、泊まれば?』
そう唐突に言葉を発したのは、遙だった。
高校三年の春、あの一件以来仲の良さを取り戻した私たちは、奇遇にも同じ短期大学へ進学し、顔を合わせる機会が増えていた。
「 いやいや… それはユミさんに… 」
遙の彼女のユミ先輩は、近隣の大学へ進学したらしく遙との関係はもちろん続いているようだった。
『 だって帰れないんでしょ?』
「 ユミさん…今日泊まりに来るんじゃ… 」
『 んーな、毎日来ないよ。』
呆れるように遙が言葉を吐く。
遙は自立心からか、大学近くのアパートを借りて一人暮らしを始めたところで、私は…というと。高校卒業と同時に家庭の事情により大学から片道3時間のところの借家で家族と共に生活していた。
そして大学が始まってすぐ、新入生歓迎会に参加したのは良いものの見事に終電を逃してしまい、駅で途方に暮れていた私のところに遙がたまたま通りかかり、今に至る。
「 でも… 」
『 じゃあこのクソ寒い中野宿するか?』
「 … それはやだ 」
『 だろ? とりあえず、母さんに連絡してやるから 』
そう言うと遙は私のスマホを取り上げ、私のお母さんの携帯へと電話をかけると、慣れた様子で会話をしていた。
『 はい、…そんな所ですね。わかりました。おやすみなさい。』
慣れた口調で、電話越しに母と会話を済ませると、スマホを私の上着のポケットへとスルリと入れた。高校三年の春以来、遙はたまに私の実家へ顔を出しては私の家族と挨拶を交わすことが多く、母に至っては一番仲のいい友人だと思っているようだった。

